最後の晩餐は超有名ですよね 最後のスーツはみなさん知りませんよね 今回はチョット真面目にいきます
私がこの仕事を始めたころ もう15年以上前のお話 ある日ある時ご老人の紳士がご来店下さり ご注文を頂いたのですが 先輩が冗談であの紳士の方は最後のスーツになるかもしれないね
などと失礼な事を言い出しました その時はそれ以上何も思いませんでしたが その紳士はいつまでたっても仕立てあがったスーツを取りに来ないのです それで先輩の言った言葉を思い出し
しばらくして私はその紳士とお会いする事なく 転勤となり それ以後ご年配の紳士の寸法を頂くときに 必ず思い出すようになりました
先月お見えになったお客様は 大正生まれの方で 近々ご親戚の法事があるため 以前のスーツがきつくなり 修理しても着れないほど太ったみたいなので ご注文を受けました
当店では初めてのご注文ですし 以前の記憶もあるので 丁寧に採寸をいただきお仕立てしました 普通の方の採寸を手抜きするという意味ではありませんよ 念のため
年配の方の採寸で気をつける事は ゆとり寸の取り方 好みの寸法通りに仕立てる事この2点を間違わないようにしなくっちゃ ゆとりの好みは各人マチマチですが ご年配の方は特にゆとりがたくさんあるほうがお好きなようです
あまりにもブカブカはダメですけど こちらの思いを通すのもダメ 格好よりも着やすさ第一のお仕立てしないといけません
長い間スーツを着られていますので ここの寸法はコレというのを お持ちですから そのへんも理解して裁断しないと 気に入ってもらえません
その大正生まれの方は 極端に短い袖丈がお好きで シャツが4センチくらい上着から出るのが好きなそうです
こんな時は説得や説明は嫌われます 息子みたいな小僧に なんだかんだと言われたくはないですよね 相談の感じで話 なんとか3センチで決定 ほっとしました
仕立て上がり 試着していただき 袖丈もOKが出ました ハッピーハッピーです お店からお帰りになる後ろ姿を見送りながら ご年配の紳士のお客様の時は必ず 最後のスーツになったあの紳士を思い出ます ナニナニさん 長生きしてくださいよ
元気でスーツを着ていって下さい 最後のスーツにしないでね と祈るような気持ちでお見送りをします
商売ですから またご来店していただき ご注文を頂けるのは 大変ありがたい事ですが 最後のスーツは作りたくないし 何だか複雑なんですよね 女の人にはモテナイけど またこれがご年配の方にはモテまして 光栄なんですが
最後の言葉 皆さん元気で長生きしょうね〜 お願いしますよ〜ん
おわり
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